今日元カノに会って悲しくなった

元カノに渡すべき荷物があったので、その受け渡しのために今日元カノが家を訪ねてきた。

元カノは俺に会いたくないと言っており、着く直前に連絡するからマンションのエントランスに荷物を置いておき、着いたらオートロックを開ける方法での受け渡しを提案されていた。

でも俺としては大好きだった(今も大好き)元カノが今どんな様子かを確認したかったので、その提案には特に返信をしていなかった。

 

直前になって元カノから連絡があったため、荷物を部屋の中に置いて散歩に出かけた。

外にいれば家に戻る際に玄関前で待つ元カノに会えるからである。

我ながらなかなかいい案だったと思う。

 

元カノからの到着連絡を受けて、散歩を切り上げて家に向かったところ家の前に工事用の大型バンが止まっているのに気づいた。そして玄関から車に向かってくる人相の悪い小汚めな男とすれ違った。

 

恐らく元カノの新彼氏だろうと思った俺は、なんだこいつと言う目でガンを飛ばしながらすれ違った。

ちなみに俺は今日は在宅勤務だったにも関わらず、結婚式用の上質なスーツで散歩をしていたので、できるビジネスマン感を漂わせることができており相手は少し怖気付いていたようだった。

新カレが来ることは想定外だったのだが、彼女が目にする最後の俺になるかもしれないので、一番かっこいい姿を見せておきたいと思ったのだ。

 

そして待望の元カノと対面した。

彼女は冬でも背広は着たことがない俺のスーツ姿に少し面食らっていたようだった。

ここまではほぼ思惑通りの展開といっていいだろう。

 

元カノの様子はというと、別れる前より太ってしまっていて、表情が強張っており久しく全力で笑ったことが無いような顔をしていた。

 

元カノは本当にとてつもなく笑顔が素敵で可愛い女性だったので、その様子を見て僕はショックを受けてうろたえてしまった。

 

元カノの美貌であれば、もっと素敵な男と付き合えるはずなのに僕と別れた寂しさを紛らわせるためにあまり選ぶ余裕がなかったのではないかと思った。

だとしたらなんてことをしてしまったんだ。

僕は本気で元カノのことを純粋で素直で可愛くてチャーミングな最高の女性だと思っているので、別れてしまった今でも心から彼女の幸せを願っていた。

(ここで別れた理由を簡単に述べておくと、僕の方が恋人としての愛情から家族としての愛情に変わってしまったことで振られた感じです。)

 

もっといいやついるじゃんなんでなんでなんで。と言う感情がどばーっと湧いてくるとともに、元カノへの諦めのような感情もその瞬間生まれた。

その感情は例えるなら、元カノが泥沼に片足を突っ込んでしまった。もうひっぱりあげることはできない。その方向に進むのを止めることができない。と言う気持ちである。

僕は新カレができているだろうことは分かっていたが、数年後とかにまた元カノと自分がくっつくことになると信じて疑っていなかった。

 

それほどに一緒に過ごした日々は、2人の相性の良さをたくさん笑いあった楽しい思い出を色濃く残していたのだ。

 

しかし元カノの様子を確認した瞬間に、僕達はもうダメなんだと悟ってしまった。

元カノが別の世界に転校してしまったようなそんな感覚だ。

あるいは、伊邪那岐が根之堅州国に行った伊邪那美を追いかけたあげく、蛆がたかっている伊邪那美の姿を一目見て逃げ帰ってきたようなそんな感覚だ。

 

僕はごめんね。。。ごめんね。。。と何度も謝ることしかできなかった。

 

その後部屋に彼女に渡す荷物をとりに行った。荷物の中に用意しておいた手紙とプリントした2人の笑顔の写真を紛れ込ませて準備をしていたのだが、しばらく考えた上で荷物からそれらを抜きとった。

手紙は、彼女が来る直前に書き直したもので、何年後でもいいから許してくれる日が来たら連絡して下さい。いつまでも大好きです。と言うようなことを書いていたのだが、なんだかこれを渡すのは違うと思ってしまったのだった。

もしかしたら元カノに戻ってきて欲しいと思っていた気持ちが消滅してしまったのかもしれないし、これらを渡すまでもなく自力で戻って来てくれると思ったのかもしれない。自分自身よく分からない状態だ。

きっと今の萎みきったような彼女が満面の笑みの写真を見たら、本当に戻ってきたくなっていたかもしれない。手紙なんて絶対書かなそうな今カレと比べて戻ってきたくなるかもしれない。それはなんだかよろしくないことのような気がしたのだ。どう言う意味でかは分からないのだが。

 

荷物を手渡す時には、大丈夫?大丈夫?と何度も言って、何が?と言われてしまった。

今思うとこの時に堂々と新カレに話かけに行くべきだったと思う。どんな男かが別れば俺の中の誤解が解けたり未練が残ったり少なくとも自分の気持ちが宙に浮かんだ状態にはならなかっただろうと思う。

 

それができなかったのは、自分の機転のなさと実力不足だろう。咄嗟の状況で最善の動きができる人間はすごいと思った。

 

元カノはお洒落やインテリアが好きなのに、あんな殺伐とした男といて楽しめてるんだろうか。

元カノからお洒落さや可憐さがなくなってしまうとしたら本当に悲しい。そんなことになるとは限らないが、少なくとも今日あった彼女は以前に比べるて美貌が減ってしまっていた。

 

いつまでも純粋で素直で明るくチャーミングな彼女でいて欲しい。

このあと自分の中にどう言う感情が生まれてくるのかは分からないが、彼女が幸せになることは相変わらず強く願っている。